2025.11.13
注文住宅で選ぶ「長期優良住宅」と「GX志向型住宅」—ZEHとの違いと最適解
「長く安心して暮らせる家」と「高い省エネで家計も環境もやさしい家」。どちらも実現したいけれど、長期優良住宅とGX志向型住宅、そしてZEHの違いがわかりにくい—そんな声をよく伺います。本稿では、建築士の視点から、それぞれの目的・基準・優遇制度・コストと運用のリアルを整理。注文住宅で後悔しない選び方を具体的にご案内します。

外皮性能・耐震・維持保全計画まで、最初の設計段階で最適化するのが近道です。
まずは要点。3つの制度の「ねらい」と「向いている人」
- 長期優良住宅:世代を超えて住み継ぐための耐久性・維持保全・省エネ・面積・災害配慮までを包括する認定。税優遇やフラット35Sの金利引下げで家計面の支えも厚い。長く良い状態を保ちたい人に最適。
- ZEH:断熱+省エネ+創エネで年間のエネルギー収支ゼロ以下を目指す家。光熱費を下げたい・創エネを活用したい人に向く。
- GX志向型住宅:ZEH水準を大きく上回る省エネ水準(断熱等級6、BEI≦0.65等)とHEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入を要件化。立地に関する除外要件も明確。より高効率・高快適を志向する人に。

断熱等性能等級は間取りや窓配置・日射取得の設計とセットで考えると効果的です。
長期優良住宅とは
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅として、所管行政庁の認定を受ける制度です。劣化対策・耐震性・維持管理の容易性・省エネ・面積要件・災害配慮など、家の寿命と暮らしの安心をトータルで高める設計・施工・維持の枠組みが整います。省エネ基準は新築で断熱等性能等級5+一次エネルギー消費量等級6が求められます。
認定実績は近年も高水準で、制度開始以降の累計は令和5年度末で約159万戸。毎年おおむね10万戸規模で推移しています。
長期優良住宅の主なメリット
- 快適・健康:断熱・気密・日射取得の最適化で、夏は涼しく冬はあたたかい室内環境を維持しやすく、結露抑制や温度差の軽減にも寄与。
- 資産性:維持保全計画の策定・記録で、メンテ履歴が可視化。売却時の安心材料になりやすい。
- 家計メリット:住宅ローン減税の借入限度額は新築で4,500万円(子育て世帯等は5,000万円)、登録免許税・不動産取得税・固定資産税の軽減、フラット35S等の金利引下げも利用可能。

申請は着工前。住宅会社が手続きをサポートするのが一般的です。
留意点・コスト感
- 初期コスト:耐力・断熱・開口部・設備・換気の水準底上げ、性能証明の取得で一般仕様よりコスト増になることがあります。中長期では光熱費・維持更新費の平準化が見込めます。
- 手続きと記録:設計段階からの性能計画と、完了後の維持保全記録づくりが必要。自治体からの報告要請に備え、点検・補修の履歴を整理しましょう。
認定までの流れ(新築・戸建の一般例)
- 登録住宅性能評価機関で性能確認(設計図・計算書の提出)
- 確認書または住宅性能評価書の発行
- 所管行政庁へ認定申請 → 審査 → 認定通知書の交付
※申請は着工前に行います。住宅会社(設計・施工)と早めにすり合わせるのがポイントです。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは
ZEHは、断熱の強化と高効率設備で消費エネルギーを減らし、太陽光発電などの再生可能エネルギーで創ることで、年間の一次エネルギー収支を「おおむねゼロ以下」にする家の総称です。
- メリット:光熱費の削減、停電時のレジリエンス(蓄電併用で向上)、快適性の底上げ。
- 留意点:創エネ量は天候・立地の影響を受けます。売電条件や自家消費比率も計画段階で検討を。

創エネは日射条件・屋根形状・影の有無で発電効率が変わります。
GX志向型住宅(脱炭素志向型住宅)とは
GX志向型住宅は、政府が普及を後押しする高水準の省エネ住宅です。戸建の要件は、断熱等性能等級6以上、BEI(再エネ除く一次エネ)≦0.65(=35%以上削減)、再エネを含む一次エネ削減率100%以上(寒冷地等は75%以上・多雪地域や都市部狭小地等は要件なし)、そしてHEMS(ECHONET Lite AIF対応コントローラ)の導入です。
立地面では、土砂災害特別警戒区域や災害危険区域(急傾斜地崩壊・地すべり防止区域)、市街化調整区域かつ一定の浸水・土砂警戒区域などは原則対象外。制度の公式サイトに除外要件が明示されています。
GX志向型住宅のメリットと留意点
- メリット:より高い断熱・省エネ・創エネ・HEMSの統合により、光熱費の一層の抑制と体感温度の安定が期待できます。
- 留意点:断熱・設備水準と証明取得の分、初期コストは上がりがち。太陽光の発電条件や配線経路、蓄電池の設置スペース、メンテ費の見積もりを初期段階で精査しましょう。

HEMSは消費・発電・蓄電の最適運用に有効。生活行動と連動させると効果が高まります。
長期優良・GX志向・ZEHの「ちがい」を一気に把握(比較表)
| 項目 | 長期優良住宅 | GX志向型住宅 | ZEH(ZEH水準住宅) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 長寿命・維持保全・安全性を備え、世代を超えて住み継ぐ | ZEH水準を上回る省エネでGXを牽引(脱炭素の加速) | 断熱・省エネ・創エネで年間収支ゼロ以下を目指す |
| 省エネ基準 | 断熱等級5+一次エネ等級6 | 断熱等級6、BEI≦0.65、再エネ含め▲100%等 | 断熱等級5、再エネ除く一次エネ▲20%以上(等級6) |
| 創エネ設備 | 必須ではない(推奨) | 太陽光等の導入が前提(要件に反映) | 創エネが前提(太陽光が一般的) |
| エネルギーマネジメント | 任意 | HEMS(ECHONET Lite AIF対応)必須 | 任意(導入で自家消費最適化) |
| 耐震 | 等級2以上(※木造2階以下の壁量計算は時期により等級3を要した経緯あり) | 耐震要件の明示はなし(建築基準法等を満たす) | 耐震要件の明示はなし(同左) |
| 税・融資 | 住宅ローン減税の上位枠、各税の軽減、フラット35S等 | 補助制度の上位枠(例:新築160万円) | 補助制度あり(新築40万円 等) |
| 立地制約 | 特段の除外要件なし(ただし災害配慮) | 土砂災害特別警戒区域等は原則対象外 | (同事業枠内の要件による) |
基準の根拠:長期優良住宅(断熱等級5+一次エネ等級6)、ZEHの考え方、GX志向型住宅(等級6・BEI・HEMS・立地要件)等。詳細・最新は各公式資料をご確認ください。

温熱設計は快適さと光熱費の両方に効きます。窓位置・庇・換気計画も重要です。
家計と快適性の視点で見る「費用対効果」
初期費用は、性能水準の引き上げ・証明取得・創エネ設備の導入で増える一方、長期の光熱費・更新費・保険料・税優遇まで通算すると、総支出の差は縮まる(あるいは逆転する)ケースも多くあります。具体的な損益分岐は建築地の気候帯・屋根の発電条件・家族の在宅時間・電気料金プランで変動するため、設計初期に複数シナリオでの一次エネルギー計算と光熱費試算をおすすめします。
ケース別の選び方(リアルな目安)
① 子育て真っ最中・光熱費を確実に下げたい
ZEH(断熱等級5+創エネ)を軸に、日中の自家消費を高める家電運用と蓄電の計画を。学習・在宅時間が長いならGX水準も検討価値あり。
② 二世帯・長く住み継ぎたい・売却時の安心も重視
長期優良住宅を基本に、耐震・劣化対策・維持保全履歴をしっかり整備。将来の改修のしやすさ(可変性)も設計段階で配慮。
③ 太陽光に不利な立地・狭小地・多雪地
創エネ要件の扱い(GXの地域特例・要件なし区分)を確認。断熱・気密・日射制御・高効率設備の積み上げで「使うエネルギー自体」を小さくします。
手堅い資金計画のポイント
- 住宅ローン減税:長期優良住宅の上位枠(新築4,500万円/子育て世帯等は5,000万円)を活用。
- フラット35S:長期優良住宅・ZEH等で金利引下げメニュー。採用可否は技術基準の適合と予算枠の状況を要確認。
- 新築補助:子育てグリーン住宅支援(GX160万円/長期優良80万円/ZEH40万円)。受付期や予算上限に注意。
Q&A(よくある質問)
- Q1. 長期優良住宅とZEHはどちらにすべき?
- 長期優良は「長寿命・維持保全・税優遇」、ZEHは「光熱費削減・創エネ」を強みとします。両立も可能なので、敷地条件・優先順位・資金の三点で最適解を探りましょう。
- Q2. GX志向型住宅の必須要件は?
- 断熱等級6、BEI≦0.65、再エネ含む一次エネ削減率100%(寒冷地等は75%)+HEMSが基本。立地には除外要件があるため、早期に該当可否を確認します。
- Q3. 長期優良住宅の耐震等級はいくつ必要?
- 原則耐震等級2以上です。木造2階以下の壁量計算では等級3を求めた暫定措置期がありましたが、制度見直しにより整理されています。
- Q4. 税優遇はいつまで有効?
- 住宅ローン減税の枠や各税の軽減は適用期限・条件があります。2025年入居分の長期優良住宅は上位枠が設定されています(最新要件は公式資料を確認)。
参考リンク
- 国土交通省:長期優良住宅のページ(制度・申請・支援制度)
- 子育てグリーン住宅支援(新築住宅の省エネ性能)(GX/長期優良/ZEHの要件一覧)
- 環境省:住宅脱炭素NAVI(ZEHの考え方)
まとめ
「長期優良」=長寿命と維持の仕組み、「ZEH」=収支ゼロの考え方、「GX」=さらに高い省エネ水準とHEMS連携。どれが正解ではなく、敷地・暮らし方・優遇制度の活用度合いで最適解は変わります。アップルホームでは、温熱・耐震・創エネ・設備・収納・動線を統合し、将来の維持まで見据えた埼玉(狭山市・所沢市・川越市)での最適解をご提案します。まずはご希望とご予算をお聞かせください。

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