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2026.02.15

注文住宅の回遊動線の落とし穴|広くなるのに片付かない家の共通点3つ

段ボールに囲まれて困った表情の男性。注文住宅の回遊動線で「広くなるのに片付かない」原因を解説

回遊動線は便利でも、収納計画が弱いと片付かない家になりがちです。

回遊動線は“動きやすさ”を増やしますが、収納の位置まで設計しないと、広くなったはずなのに片付かない家になりがちです。
注文住宅で回遊動線を成功させるコツは、通り道を増やすことではなく、各動線に片付けの終着点(しまう場所)を用意することです。

「キッチンを中心にぐるっと回れる間取り」「玄関から洗面へ直行できる回遊動線」など、回遊動線は人気があります。ところが実際の打ち合わせでは、回れるルートを増やした結果、壁が減って収納が分散できず、“置きっぱなしの平面”だけが増えるケースも少なくありません。

この記事では、注文住宅で回遊動線を検討している方向けに、広く見えるのに片付かない家の共通点と、失敗を避ける判断基準をまとめます。間取り図の段階で確認できるチェック項目に落とし込むので、設計・コーディネーターとの打ち合わせにそのまま使えます。

結論

  • 回遊動線は「回れること」より、各ルートに“しまう場所”を用意できるかで片付けやすさが決まります。
  • 通路幅の目安・出入口の数・収納の配置をチェックし、家事動線だけでなく帰宅動線まで設計すると失敗しにくいです。
  • ただし生活習慣(置きっぱなしポイント)と家具サイズが未確定のままだと、回遊動線は“抜け道”になりやすいので、荷物の定位置を先に決めてから動線を描きます。

回遊動線とは?広くなるのに片付かない理由

回遊動線を取り入れた注文住宅の間取りイメージ

回遊動線は「回れること」より収納の配置が重要

回遊動線とは、家の中を行き止まりにせず、複数のルートで行き来できるようにした動線のことです。代表例は、キッチン→パントリー→洗面→廊下→LDKのように、ぐるっと回れる間取り。通り抜けできる場所が増えるため、混雑しにくく、家事の移動距離が短くなるなどのメリットがあります。

一方で「広くなる」と感じるのは、視線が抜けたり、廊下が短く見えたりする心理効果も影響します。実際は、回遊のための通路や出入口が増える分、床面積や壁面の使い方がシビアになります。ここで収納が追いつかないと、回遊動線は“片付け動線の抜け”になってしまうのです。

「回遊動線」と「家事動線」は別物

回遊動線と似た言葉に「家事動線」があります。どちらも移動をラクにする考え方ですが、狙いが少し違います。

  • 回遊動線:複数ルートをつくり、人の流れを分散させる(渋滞しにくい・回り道できる)
  • 家事動線:洗濯・料理・片付けなど“作業”の順番がスムーズになるように結ぶ(ムダな往復を減らす)

例えば、キッチンを中心に回れるようにしたとしても、買い物から帰宅したときに「袋→パントリー→冷蔵庫→ゴミ箱」の流れが遠回りになっていれば、作業はラクになりません。逆に回遊がなくても、水回りをまとめて“洗う→干す→しまう”が一筆書きなら、家事はかなり快適です。

注文住宅の打ち合わせでは、回遊動線を「人の流れ(混雑)」「作業の流れ(家事)」に分けて考えると、必要な回遊だけが残りやすくなります。

片付かない家に共通する“通り道化”のサイン

回遊動線で片付かない家は、片付ける意思が弱いのではなく、間取りが「置くのがラク」「しまうのが遠い」状態になっていることが多いです。とくに次のサインがあると、散らかりやすさが加速します。

  • 回遊ルート上に仮置きできる面(カウンター・棚)はあるが、すぐ近くに収納がない
  • 出入口が多く、壁が細切れで収納家具を置ける壁面が残らない
  • 家族がよく通る場所に、ランドセル・郵便物・充電器などの“定位置”が決まっていない
  • 片付けの動作が「通り過ぎた場所に戻る」必要があり、行動が続かない

人は疲れているほど「近い場所」に置きたくなります。回遊動線は近道が増える反面、どこでも通れてしまうため、置き場所が分散しやすいのが注意点です。“通る場所に、しまう場所をセットで置く”が基本になります。

回遊動線が効く間取り・効きにくい間取り

回遊動線は、目的がはっきりしていると強い味方になります。逆に「なんとなく便利そう」で採用すると、通路だけが増えて失敗しやすいです。

回遊動線が効きやすいのは、次のように“作業の順番”が見えているケースです。

  • 玄関→ファミリークローク→洗面→LDK(帰宅後の片付けが習慣化しやすい)
  • キッチン→パントリー→玄関(買い物動線が短く、食品ストックが散らかりにくい)
  • 洗面→ランドリー→ファミクロ(洗濯の往復が減り、干す・しまうが続けやすい)

一方、効きにくいのは次のパターンです。

  • LDKの四方に出入口をつくり、リビングが“通り抜けの交差点”になる
  • 回遊ルート上に収納を置けず、結局リビングに家具やラックを追加する
  • 家族の動線がキッチンを横切り、料理中に人がぶつかりやすい

回遊動線は「ぐるっと回れるか」より、回遊の途中で“片付けが完了する”設計になっているかで成否が決まります。

注文住宅で回遊動線を採用する判断基準

注文住宅の回遊動線で重要な通路幅のイメージ

すれ違う場所は幅と扉の干渉をセットで確認

ここからは、図面の段階でチェックできる「判断基準」を整理します。回遊動線を入れる・入れないの二択ではなく、“必要なところにだけ回遊をつくる”ための物差しとして活用してください。

通路幅・すれ違いの目安

回遊動線で後悔しやすいのが、通路幅の感覚です。幅が狭いと「回れるけれど使わない動線」になり、幅を広げすぎると収納や家具の面積が削られます。

一般的な設計では、次のようなレンジを目安に検討することが多いです(体格・扉の種類・家具家電サイズで調整します)。

場所 1人が通る目安 すれ違い・作業を想定する目安 チェックポイント
廊下 約780〜910mm 約900〜1,200mm 曲がり角・扉の開閉で実質幅が減らないか
キッチンの作業通路 約900〜1,100mm 2人作業なら約1,200mm前後 冷蔵庫・食洗機の開閉時に通れなくならないか
ダイニング背面の通路 約600〜800mm 椅子を引くなら約900mm前後 配膳・片付けの動きが詰まらないか
洗面・脱衣室まわり 約780〜900mm 洗濯カゴや室内干しを想定すると余裕が必要 引き戸にして干渉を減らせるか

※寸法はあくまで目安です。実際は間取り全体のバランス、建具の種類(開き戸/引き戸)、手すり・ベビーカー等の想定で最適値が変わります。

収納は「面積」より「配置」:3つのチェック項目

回遊動線が片付かない原因は、収納の“総量”不足よりも、収納の位置が生活行動とズレていることが多いです。次の3つのチェックで、配置のズレを早めに見つけましょう。

回遊動線と相性の良いファミリークロークの例

帰宅動線に「しまう」を組み込むと散らかりにくい

  1. 帰宅動線に「3点セット」があるか:上着/バッグ/郵便物(書類)を置いてしまえる場所が、玄関〜LDKの途中にある。
  2. 買い物動線が“キッチンの手前”で完結するか:食品ストック・飲料・日用品の置き場が、キッチンに入る前後に用意されている。
  3. 洗濯動線が“一筆書き”になっているか:洗う→干す→しまう(ファミクロ等)が同じ方向に流れる。

ポイントは、収納を「まとめる」より“散らかりやすいモノの近くに分けて置く”こと。回遊動線はルートが複数になる分、終着点がないと物が漂います。図面上で、ランドセル・鍵・充電・書類・ゴミ箱などの“居場所”を赤ペンで書き込むと、抜けが見えやすいです。

回遊ルート数は増やしすぎない:出入口の数を数える

回遊動線を増やすと、出入口(ドアや開口)が増え、壁が細切れになります。すると、収納をつくる場所や家具を置ける面が減り、結果として片付けにくくなります。

目安としては、LDKを「通り抜けの交差点」にしないこと。図面で次の2点を確認してみてください。

  • リビングに“家具が置ける壁”が2面以上あるか(テレビ・ソファ・収納の逃げ場をつくる)
  • キッチンを横切らずに通り抜けできるか(作業エリアと通行エリアを分ける)

回遊が必要なのは「混雑しやすい場所」「家事の往復が多い場所」です。全体をぐるぐる回せる必要はありません。まずは1〜2か所の“抜け道”から検討すると、壁と収納を残しやすいです。

家族構成別のおすすめ回遊パターン

回遊動線は、家族の人数や生活時間がずれるほど効果が出やすいです。逆に、家族が同じリズムで動く家庭では、回遊より収納と定位置づくりが効くこともあります。

  • 共働き+小学生:玄関→ファミクロ→洗面→LDK。朝の身支度と帰宅後の片付けが流れで完結しやすい。
  • 乳幼児(ベビーカー・抱っこ):玄関まわりは幅と置き場を優先。回遊は水回り中心に絞り、リビングは落ち着く壁面を確保。
  • 中高生(荷物が多い):リビング学習の有無で収納位置が変わる。学校用品の“定位置”を通学動線上に用意。
  • 夫婦+将来を見据える:回遊で遠回りにならないよう、寝室→トイレ→洗面の距離と段差の少なさを優先。バリアフリーの考え方は国土交通省の住宅性能表示制度も参考になります。

外部参考:国土交通省|住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅性能表示制度等)

チェック表:回遊動線と片付けやすさの自己診断

最後に、図面を見ながらチェックできる表を用意しました。迷ったら「YESが多いほど、回遊動線が片付けに寄与しやすい」と考えてください。

チェック項目 YESの目安 NOだと起きやすいこと 改善アイデア
帰宅後の荷物がしまえる 玄関〜LDKの途中に上着・バッグ・書類の定位置がある 椅子・カウンターが仮置き台になる ファミクロ+小カウンター/壁面フック+引出し
買い物の片付けが短い 玄関→パントリー(またはキッチン収納)へ直行できる 床に箱買い飲料が残る 土間収納の一部を食品・日用品ストックに
洗濯が“戻らない” 洗う→干す→しまうが同じ方向に流れる 畳み途中の山が定着する ファミクロをランドリー隣接/室内干しスペース確保
リビングが通り道にならない リビングを通らなくても別ルートで移動できる テレビ前を人が横切る 廊下側に抜け道を寄せ、リビングは“溜まり”に
キッチンが交差点にならない 通行ルートと作業ルートが分離されている 料理中のストレスが増える パントリーをバッファに/背面通路の幅を再調整

回遊動線あり・なしを比較すると何が違う?

家事動線と回遊動線を両立したLDKの実例

回遊の効果は「渋滞」と「家事の往復」で判断

回遊動線は魅力的ですが、全員にとって正解とは限りません。ここでは「回遊動線あり」と「回遊動線なし(一本道)」を比較し、向き・不向きを整理します。

回遊動線ありのメリット

  • 渋滞しにくい:朝の支度や来客時に、同じ場所で人がぶつかりにくい。
  • 家事のショートカットができる:キッチン⇄洗面、玄関⇄パントリーなど、往復が多い作業ほど効く。
  • 視線が抜けて広く感じやすい:行き止まりが減り、空間が連続して見える。

とくに共働きで時間がタイトなご家庭や、家族が同時に動く時間帯が多い場合、回遊の恩恵が出やすいです。

回遊動線ありのデメリット

  • 通路分の面積が必要:回遊のための床面が増えると、収納や居場所が削られる。
  • 壁面が減り、家具配置が難しい:出入口が増えるほど、テレビ・ソファ・収納の置き場が迷子になりがち。
  • 生活感が見えやすい:キッチンや水回りが通り道になると、片付けのハードルが上がる。

「回遊をつくったのに片付かない」は、このデメリットを後から埋めようとして収納家具が増え、さらに動線が狭くなる…という流れで起きやすいです。

「回遊なし」でも快適にする代替案

回遊動線の目的は、混雑の回避と家事の短縮です。目的が同じなら、回遊以外の方法でも実現できます。

  • 2WAY動線:玄関からLDKへ「正面ルート」と「水回りルート」の2通りだけをつくる。
  • 引き戸で“必要なときだけ回遊”:普段は閉めて壁を確保し、家事や来客時だけ開けて通り道にする。
  • 収納を動線に組み込む:廊下を減らして、壁面収納やファミクロを“通り抜ける収納”にする。

回遊は「やる・やらない」ではなく、暮らしの優先順位に合わせて強弱をつけるのが現実的です。

回遊動線でよくある失敗と対策(3つ)

ここでは、実際に多い失敗を3つに絞り、原因と対策をセットでまとめます。図面の時点で気づければ、修正コストが小さく済みます。

失敗1:動線を優先しすぎて収納が足りない

失敗例:キッチンの回遊はできたのに、パントリーが小さく、日用品のストックやゴミ箱の置き場がなくてLDKに出てしまう。帰宅後のカバンも置き場が定まらず、ダイニングに山積みになる。

原因:回遊の通路を確保するために、収納を“どこかにまとめればいい”と後回しにしたこと。収納が遠いと、片付けは続きません。

対策:回遊動線は「通る→しまう」を同じルート上で完結させます。次の順番で考えると抜けが減ります。

  1. 家族の持ち物を「帰宅時に手に持っているもの」と「家の中で増えるもの」に分ける
  2. それぞれの終着点(収納)を、動線上の“途中”に置く(ゴールだけに集約しない)
  3. 収納の近くに、郵便・書類などの一時置きスペースを小さくても確保する

片付けが続く家は、収納量より「しまうまでの距離」と「しまい方の簡単さ」が整っています。

失敗2:入口が増えて壁が減り、家具が置けない

失敗例:LDKの四方に出入口を設けた結果、テレビボードの位置が決まらない。収納家具を後から足して通路が狭くなり、回遊動線が意味を失う。

原因:回遊=出入口を増やす、と考えてしまい、壁面の優先順位を決めないまま開口をつくったこと。壁が減ると、片付けの“受け皿”も減ります。

対策:まず「置く家具」を先に決め、必要な壁面を確保します。

  • ソファ・テレビ・ダイニング・冷蔵庫など、サイズが大きいものから配置を仮決めする
  • そのうえで、回遊の開口は“最小限の数”に絞る(抜け道は1〜2か所でも十分なことが多い)
  • 開き戸が通路を塞ぐなら、引き戸や開口位置の調整で“実質幅”を確保する

回遊動線を成立させるコツは、動線だけを設計しないことです。家具配置まで含めて検討すると、必要な開口が自然に絞れます。

失敗3:キッチンが交差点になり生活感が露出する

回遊動線を整えるパントリー・背面収納の例

生活感は「通る」と「作業」を分けて隠す

失敗例:キッチンの背面や横を家族が頻繁に通り、料理中に落ち着かない。キッチンに物が出た瞬間に生活感が丸見えで、片付けのプレッシャーが強い。

原因:回遊ルートと作業ルートが同じ場所に重なっていること。キッチンは“作業場”なので、通行が多いほど散らかりやすく感じます。

対策:「通る」と「作る」を分ける設計にします。

  • パントリーを回遊のバッファにし、キッチン本体を通り抜けにしない
  • ゴミ箱・家電・ストックはパントリーや背面収納に集約し、ワークトップは“作業面”として空ける
  • 来客目線が気になる場合は、腰壁やカウンター高さ、入口位置で視線をコントロールする

回遊動線は便利ですが、キッチンが交差点になるとストレスが増えます。「家族は通れるが、作業は邪魔されない」バランスを狙いましょう。

注文住宅の回遊動線FAQ(5問)

Q. 回遊動線は必ず入れた方がいい?
必須ではありません。渋滞が起きる時間帯や、家事の往復が多い場所に“必要な分だけ”入れるのがおすすめです。回遊よりも、帰宅後の片付け動線(上着・バッグ・書類の定位置)が整うと、体感の暮らしやすさは大きく上がります。
Q. 回遊動線を入れると延床面積はどれくらい増える?
間取りの組み方次第で増減します。回遊のための通路を“専用の廊下”として増やすと面積は増えやすく、収納や室の配置を工夫して「通り抜ける収納」にすると増えにくいです。図面では、回遊部分が居室面積や収納を圧迫していないかを確認しましょう。
Q. 片付けやすい回遊動線に必要な収納はどこ?
ポイントは「通る場所の近くに、しまう場所」です。具体的には①玄関〜LDK途中のファミクロ(上着・バッグ)、②キッチン近くのパントリー(ストック・ゴミ)、③ランドリー隣接の収納(タオル・衣類)を優先すると散らかりにくくなります。
Q. 小さめの家(30坪前後)でも回遊動線は可能?
可能ですが、回遊を増やすほど壁面と収納が減りやすい点に注意が必要です。30坪前後なら、家全体を回すより「玄関→洗面」「キッチン→パントリー」など1〜2か所に絞ると成功しやすいです。通路幅と家具配置の両立ができるかを優先して判断します。
Q. 回遊動線の打合せで準備するものは?
家族の一日の行動と、モノの量がわかる資料があると精度が上がります。おすすめは①帰宅時に持つ物リスト(バッグ・上着・ランドセル等)、②日用品ストックの買い方(箱買い・まとめ買い)、③家具家電のサイズ、④「散らかる場所」の写真です。これがあると収納位置と回遊の必要量が決めやすくなります。

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回遊動線は、図面だけだと「便利そう」に見えやすい反面、暮らし始めてから差が出ます。アップルホームでは、生活スタイルと持ち物量を伺いながら、回遊動線と収納計画をセットで整理するお手伝いをしています。検討段階でも大丈夫なので、気になる方は情報収集から始めてみてください。

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