2025.10.24
1.5階建ての住宅とは?平屋+αの魅力と費用・間取り・選び方解説
「平屋の暮らしやすさが好き。でも、部屋数や収納は少しだけ増やしたい」。そんな声に応えるのが1.5階建てです。生活の中心は1階で完結させ、必要に応じてコンパクトな2階や小屋裏の+α空間を足す考え方。勾配天井の開放感や家族の変化に合わせやすい柔軟性が魅力です。なお、建築確認上の種別は「2階建て」になるのが一般的です。

平屋に+αの空間を重ねた1.5階建ての暮らし
1.5階建ての基本:どんな家か?
1.5階建ては、1階に日常機能(LDK・水まわり・主寝室など)を集約し、2階は必要最小限の個室や多目的スペース、または小屋裏収納を組み合わせる構成です。2階の床面積を絞ることで、1階の一部に上階が載らない部分が生まれ、そこは屋根勾配を活かした高天井のLDKにしやすくなります。結果として、コンパクトでも広がり感のある室内をつくれるのが特徴です。
小屋裏などのプラスα空間は、天井高さや面積の取り方次第で延べ床面積に算入されない場合もあります。一般に天井高1.4m以下などの要件が目安とされますが、適用条件は自治体の運用で異なるため、設計初期に確認しておくと安心です。
建物の高さが一般的な2階建てより抑えやすく、北側斜線や道路斜線などの高さ制限に配慮しやすい点も、都市部や狭小地で選ばれる理由のひとつです。
1.5階建てが向いている家族・敷地条件
ワンフロア中心の暮らしを大切にしたい
日常の動線はできるだけ短く、家事は平面的に完結させたい方に向いています。将来のライフステージに備え、1階だけで生活できる間取りにしておくと安心です。
土地がややコンパクト、または高さ制限が厳しい
平屋だと建築面積が広がるため外構や駐車が圧迫されるケースでも、1.5階建てなら延床に対して基礎と屋根の面積を抑えやすい設計が可能です。
成長に合わせて空間の使い方を変えたい
子ども部屋を2階に計画し、幼児期は家族のフリースペース、学齢期は個室、独立後はワークスペースや趣味部屋へ——という可変性に強みがあります。
メリット:1.5階建てで得られる価値
開放的なLDKと勾配天井
2階の載らない範囲に屋根形状を活かすことで、天井を高く、吹き抜けのような抜けをつくれます。視線が縦に抜ける分、同じ床面積でも心理的な広さを感じやすく、家族が自然に集まる場所になります。
平屋に近い生活動線と将来の安心
主寝室や水まわりを1階にまとめれば、ワンフロアで生活が完結。将来的に階段の上り下りを控えたい時期にも対応しやすく、長く住み継げる計画になります。
+αの収納と家事効率
屋根裏のデッドスペースを活かす小屋裏収納は、季節家電や衣替え、思い出の品の保管に重宝します。2階とフラットにつなぐ計画にすれば、日常利用のハードルも下がります。
コストのバランスが取りやすい
同じ延床を前提とした場合、平屋より基礎・屋根面積を抑えやすい一方、2階建てよりは階段や屋根形状の工夫でコストが近づくことがあります。総額は仕様や地域差が大きいものの、平屋と2階建ての中間に着地しやすい傾向です。
採光・通風計画の自由度
勾配天井部に高窓やトップライトを設けると、明るく風が通るLDKに。通風シミュレーションに基づく窓位置の最適化で、冷暖房頼みになりすぎない暮らしを目指せます。

上部に2階のない範囲を活かし、LDKは開放的に
デメリットと注意点:先に知っておけば回避できる
温熱環境のムラ
吹き抜けや高天井は上下の温度差が生じやすい傾向があります。屋根断熱の強化、気密確保、空気循環(シーリングファン・回廊形状・回収換気)などを併用して対策しましょう。
階段の昇降と将来対応
普段使いの個室を2階に置く場合は、階段勾配や踊り場の幅、手すりの形状まで丁寧に検討を。1階のみで寝起きできる「将来の寝室」確保が安心です。
メンテナンスの考慮
屋根勾配が急な計画では、将来の点検足場や太陽光パネルの清掃動線も事前に計画に入れておくと良いでしょう。屋根材の耐久・保証年数も確認して選択します。
法規の読み違いに注意
建築確認の扱いや小屋裏の床面積算入の可否は、自治体ごとに運用が異なります。申請前の事前協議と、用途の明確化(収納か居室か)を行い、想定外のコストや納期遅延を防ぎます。
間取りアイデア集:家族の変化にフィットする10の工夫
1)リビングを家の「中心」に据える
上階のない範囲を広くとり、勾配天井+高窓で一体感のあるLDKに。ダイニング上にキャットウォーク風のスタディコーナーを掛け合わせるのも人気です。
2)主寝室は1階、2階はフレキシブルに
将来の生活を見据え、主寝室・WIC・水まわりを1階に集中。2階は子ども部屋2室→将来はワーク+ゲストに転用できる間仕切り計画に。
3)家事ラク動線と回遊プラン
玄関→土間収納→パントリー→キッチン→洗面→ランドリー→物干し→ファミクロを回遊させ、家事の移動距離を短縮します。
4)小屋裏収納を「しまう」から「生かす」へ
天井高や面積要件を満たす範囲で、半常用のストックヤードへ。固定階段の可否は地域差があるため、昇降の安全性と併せて検討します。
5)スキップフロアでつながりをつくる
リビングに隣接した半階上のスタディ/ホビースペースは、見守りやすく適度にこもれます。
6)窓計画と視線制御
高窓と地窓、視線の抜けをつくるピクチャーウィンドウで、抜け感とプライバシーを両立。街並みや庭の緑を取り込みます。
7)音とにおいのコントロール
LDK直上に寝室を置かない、キッチン換気のダクト径と経路を適切化するなど、暮らしの音環境に配慮します。
8)ランドリールーム+室内干し
屋根裏に熱がこもる季節は除湿機+サーキュレーターで乾きやすい環境づくり。花粉時期も安心です。
9)玄関土間と外収納
ベビーカーやアウトドア用品は土間収納へ。外部には屋根付きストッカーを設け、屋内の生活感をゆるめます。
10)太陽光と屋根形状の最適化
片流れや切妻の勾配を地域の発電量データから検討。将来の蓄電池増設スペースも見込んでおきます。

+α空間を収納だけでなく趣味の場にも活用
費用と予算の考え方:中間コストを賢く配分
コストは延床面積・仕様・地域相場で大きく変動しますが、1.5階建ては同じ延床の比較で平屋より抑えやすく、2階建てよりはやや上がる可能性がある位置づけです。理由は、基礎や屋根の面積が平屋ほど大きくならず、一方で階段や屋根形状の工夫が必要になるためです。
- 平屋:基礎・屋根が大きく外構も広く必要。バリアフリーは得意。
- 1.5階建て:基礎・屋根は中程度。勾配天井や小屋裏の造作費は要配分。
- 2階建て:延床に対する躯体コスト効率が良い反面、階段移動は日常化。
具体的な予算を決める際は、優先順位の高い性能・設備(断熱等級・窓種・換気・太陽光など)から配分し、内装や造作は可変部分に回すのが賢い進め方です。
金額例を示す場合は個別条件により大きくブレます。現地調査・概算見積→基本設計→実施設計の順で精度を上げていきましょう。
快適性能を底上げする設計・仕様の勘所
屋根断熱と天井断熱の使い分け
勾配天井部は屋根断熱(断熱層を屋根側に持っていく)が有効。小屋裏を収納や居場所に活用する場合は、熱橋対策と防湿層の連続性を確保します。
窓・気密・換気の三位一体
日射取得と遮蔽を季節で切り替えるため、方位別の窓計画と外部日よけを併用。気密性能は計画換気が設計値どおり機能する前提条件のため、現場測定(C値確認)まで含めて依頼しましょう。
上下温度差を抑える空気の流れ
吹き抜けや高天井部は、ファン+温度差センサー、室内窓やスリットを使った還気経路で空気を循環。階段室を経由させる計画も有効です。
法規と申請、税のポイント(概要)
- 建築確認上の種別:一般に「2階建て」扱い。構造・防火・避難の規定は2階建ての基準で確認します。
- 小屋裏の床面積算入:天井高1.4m以下、直下階の一定割合以下、用途が収納等なら延べ床面積に算入しない運用が多いですが、地域差あり。
- 斜線・日影規制:高さを抑えやすい1.5階は、北側斜線などに配慮しやすいのが利点。
- 固定資産税:床面積算入の有無や仕様により評価が変わります。計画段階で確認を。
平屋・1.5階・2階を比べる:向き・不向き早見
平屋が合うケース
- 広めの敷地があり庭や平面動線を重視したい
- 上下移動を最小化したい、将来の介助動線を想定
1.5階が合うケース
- 平屋の住みやすさと+αの部屋数・収納を両立したい
- 高さ制限や敷地の広さに制約がある
- LDKに開放感を出しつつ、将来は1階完結で暮らしたい
2階建てが合うケース
- 限られた敷地で部屋数を最大化したい
- 屋内の空調ゾーニングを明確に分けたい
検討の進め方:後悔を減らす5ステップ
- 要望整理:絶対条件・できれば・不要の3段階に仕分け。
- 敷地診断:法規制、近隣環境、通風・採光のクセを把握。
- 概算と優先順位:性能・構造・設備の優先度から予算配分。
- 基本設計検証:温熱・構造・収納容量をシミュレーション。
- 実施設計・申請:細部の納まり、メンテ計画、保証条件まで確認。
Q&A:よくある質問
- Q. 1.5階建ては建築確認上、何階建てになりますか?
- A. 一般的には2階建て扱いです。小屋裏収納の扱いは天井高さや面積などの要件で変わるため、設計初期に自治体の運用を確認しましょう。
- Q. 小屋裏収納は床面積に入りますか?
- A. 目安として天井高1.4m以下などを満たすと延べ床面積に算入しない運用が多いです。ただし地域差があるため、用途と昇降方法も含め事前協議が安心です。
- Q. 平屋と比べて暑さ・寒さはどうですか?
- A. 勾配天井や吹き抜けで上下温度差が出やすい分、屋根断熱の強化・気密確保・空気循環の設計が重要です。計画換気と窓の日射制御が効果的です。
- Q. 費用は2階建てより高くなりますか?
- A. 仕様や延床次第ですが、平屋と2階建ての中間に収まりやすい傾向です。屋根形状や造作の有無で上下します。
- Q. 将来、1階だけで暮らせますか?
- A. 主寝室・WIC・水まわりを1階に集約すれば可能です。階段の勾配や手すり計画もあわせて検討しましょう。
- Q. どの屋根形状が向いていますか?
- A. 太陽光や外観バランス、斜線制限への適合を考え、切妻・片流れ・寄棟を敷地条件から選びます。発電やメンテ動線も合わせて検討を。
関連リンク
- WELL+|公式サイト(ブランド・性能・プランの考え方)
- WELL+|平屋専門サイト「埼玉の平屋」(埼玉で建てる平屋)
- WELL+施工例|所沢市の1.5階の平屋
- WELL+施工例|坂戸市の1.5階の平屋
本記事は一般的な考え方をまとめたもので、最終的な仕様・費用・法規適合は個別の敷地条件・設計条件により異なります。詳細は担当者にご相談ください。
